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ピジョンの商品に込められた想いや
開発担当者のこだわりをご紹介!
こだわりがありすぎる!<br>2023年度グッドデザイン賞を受賞した<br>『じぶんでつかえるスプーンフォークシリーズ』ってどんな商品? こだわりがありすぎる!<br>2023年度グッドデザイン賞を受賞した<br>『じぶんでつかえるスプーンフォークシリーズ』ってどんな商品?

2023.12.18

こだわりがありすぎる!
2023年度グッドデザイン賞を受賞した
『じぶんでつかえるスプーンフォークシリーズ』ってどんな商品?

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離乳食後期になって食事の回数が増え、食事が楽しくなってくると、赤ちゃんは自分で食べたくなってきますよね。「食」への好奇心が大きくなる時期に赤ちゃんのお口の成長に適したベビー用のカトラリー、食具を使うことは、これから一生続く「食」の土台をつくります。
今回は、リニューアルをしたピジョンの離乳食具『じぶんでつかえる スプーン&フォークシリーズ』がグッドデザイン賞を受賞したことを受けて、プロジェクトメンバーのお三方にお集まりいただきました。
デザイン担当の三觜さん・モニター担当の鈴木さん・開発担当の岩永さんが、2回に渡って、商品の特長とともに食具について語りつくします。1回目は、『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』を中心にお伺いしました。

『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』と『じぶんでパクパクスプーン&フォーク ステンレス 1才6ヵ月頃から』

8年ぶりに全面リニューアル!どこが変わった?

リニューアルした『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』(写真左)と、従来品(写真右)

リニューアルした『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』(写真左)と、従来品(写真右)

ーーまず、『じぶんでつかえる スプーン&フォークシリーズ』が全面リニューアルしたきっかけを教えてください。

三觜さん

長い間リニューアルされていない商品ということもありましたし、さまざまな商品が乱立する離乳用品の市場の状況も含めて、今一度、食具というものに誠意を持って打ち込んでいく必要があると考えたことがきっかけです。また、おもに哺乳びんの製造・販売を行うメーカーとして、当社がこれまで行ってきた乳首や口腔内の研究と、食具への摂食には通じるものがあるため、それぞれの分野で得た知見を活かしながら、赤ちゃんとご家族にとって、より良い食具を開発していこうという動きになりました。

ーーリニューアルでどこが変わりましたか。

三觜さん

『じぶんでつかえる スプーン&フォークシリーズ』には『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』と『じぶんでパクパクスプーン&フォーク ステンレス 1才6ヵ月頃から』という2つのプロダクトがあるのですが、共通のアプローチとして、①対象月齢のお口に合った適切なボウル部(スプーンのくぼみの部分)の形状と深さ ②利き手を選ばずに使えること ③口の奥まで入れない工夫を設定しました。
9ヵ月頃からのスプーン&フォークは、グリップ部分にボリュームを出しました。赤ちゃんの小さな手でのにぎりやすさをとことん追求した結果、従来の平たい形から、現在の立体感のあるフォルムに変わりました。また、横から見るとわかるように、グリップ部分が特徴的なS字カーブになっています。この設計によって、赤ちゃんが食材を簡単にすくえること、そしてお口から水平に引き抜けることを実現しました。

S字カーブに親指が自然とはまりやすい設計 麺も食べやすい波型形状 持ち手はすべりにくく、やわらかい素材 全長約100mm

ーーなぜ、お口から水平に引き抜けることが大切なのでしょうか。

鈴木さん

赤ちゃんは、哺乳びんで飲むときにはお口を開いたままで飲んでいます。でも、ご飯を食べるときはお口を開いたまま食べませんよね。実は、赤ちゃんにとって「お口を閉じて食べる」のは思いのほか難しいのです。
特に、口が閉じていないのにスプーンから食べ物を取り込もうとすると、どうしても引き抜くときに角度がついてしまいます。そして、その癖がついてしまうと、なかなかなおりません。そのため、口が閉じた状態のままで水平に引き抜くことをサポートできるように、グリップの形にこだわりました。また、スプーンのボウル部が大きすぎないことや浅いことも、お口の閉じやすさにつながっています。

お口の成長を考えたカタチ 実際に、赤ちゃんの食べ方を観察しながら開発しました。水平に引き抜ける 奥まで入りにくくするカーブ 浅いので口を閉じやすい ※「授乳・離乳の支援ガイド」における、お口の発達ポイントをふまえて考案した形状です。

指しゃぶりがヒントに?食べ物を自然に運ぶS字カーブ

親指がS字カーブにフィットする形状。ボウル部が自然と指しゃぶりの親指の位置にくる

親指がS字カーブにフィットする形状。ボウル部が自然と指しゃぶりの親指の位置にくる

ーーS字カーブのグリップは、赤ちゃんのお口の成長について考え抜かれた設計なんですね。

三觜さん

はい。ほかにも、S字カーブの利点はあります。赤ちゃんが自分で食べる様子を見ていたところ、柄やボウル部がまっすぐな食具では、ごはんに親指を突っ込んでしまうことがよくありました。でも、『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』は親指が自然とカーブにはまるので、そのようなことはなくなりました。

岩永さん

にぎったときにボウル部が“指しゃぶりの親指”の位置にくるという点もポイントですよね。食具の扱いにまだ不慣れな赤ちゃんでも、自然とお口に運ぶことができます。

三觜さん

『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』を作るにあたって、“自分で食べる”ということはもちろん目標のひとつではありますが、その前に、適切に口に運ばせないといけないと考えました。筋肉はまだ未発達な段階ですし、「視覚では直接確認できない口元にねらって食べ物を入れる」という認知と行動も難しい月齢です。そこで、どうやったら適切に口に運べるかと考えたときに、指しゃぶりの筋肉の動きというのはとても自然なので、そこに逆らわずに作れる食具ってどんなもんだろうと考えるようになったんですよね。

鈴木さん

赤ちゃんにとって、食べ物を食具で口に運ぶ腕の動きも最初は難しい動作です。まずは『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』の、グリップをわしづかむ“上にぎり”で自分の口の位置や上肢のコントロールを学習しながら食具に慣れていき、『じぶんでパクパクスプーン&フォーク ステンレス 1才6ヵ月頃から』で指にぎりを経て、最終的に大人と同じ鉛筆にぎりを目指します。
こうした離乳食具の段階という視点からも、にぎったときにボウル部が“指しゃぶりの親指”の位置にくるというのは、食具に慣れるうえでも大切なステップだと感じています。

にぎったときの安定感を出す工夫

左から二番目の試作品が、最も商品に近い試作品

左から二番目の試作品が、最も商品に近い試作品

ーー赤ちゃんのにぎりやすさのこだわりについても詳しくお聞かせください。

三觜さん

はい。試作品を見ていただくとわかると思うのですが、裏側のへこみ感や膨らみ感を細かく調整しました。赤ちゃんの指が入り込む形がいいのか、膨らむようなぽってりした形がいいのか、それとも平たいのがいいのか、実際に赤ちゃんに使ってもらいながら、すべて検証してみました。その結果、9ヵ月頃の食具のにぎり方の主流である上にぎりの安定性を出すためには、底面はややへこみつつも、全体の形は平面的なものが一番扱いやすかったんです。

ーーほかの試作品と比べて、にぎりやすさは明らかに違ったのでしょうか。

鈴木さん

明らかに違ったというよりは、ほかの試作品のウィークポイントを削ぎ落としていった結果、完成形にいたったという感じですね。溝が深いものに関しては、正直な言い方をすると、そこまでへこませたからといって良いことがありませんでした。逆手持ちになったときに安定感がなかったり、「ちょっと溝が気になる」と、モニターのママからコメントがあったりもしました。
溝が深いと、お手入れにも影響が出てきますよね。逆にぽってりしすぎてしまうと、見るからに手の収まりが悪そうだったり。モニターリサーチも含め、いろいろと比較した中、ちょっとへこみのある今の形に落ち着きました。

不採用となった、溝が深く赤ちゃんの指が入り込むタイプ。赤ちゃんが使う様子を見ながら細かな調整を重ねた

不採用となった、溝が深く赤ちゃんの指が入り込むタイプ。赤ちゃんが使う様子を見ながら細かな調整を重ねた

赤ちゃんのお口に入る角度まで考え抜かれた設計

スプーンが赤ちゃんのお口に入る角度について語る三觜さん

スプーンが赤ちゃんのお口に入る角度について語る三觜さん

ーー次から次へと出てくる商品特長に、驚いています。ほかにはどのようなこだわりがあるのでしょうか。

岩永さん

グリップに対して、ボウル部がどの位置にあるべきかということも、こだわりましたよね。

三觜さん

そうなんです。赤ちゃんの場合、スプーンの入射角はいくつがいいのかというところから検証しました。当初はボウルの位置はもっと上がっていて、モニターでは、少しすくいづらそうな様子が見られました。そこで、S字カーブの形に関しては下げた方がいいよね、ということで、角度について数種類は検証し、改良を重ねました。

ーー商品開発をしていくうえで、やはりモニターリサーチがとても重要なのですね。

鈴木さん

そうですね。対象月齢である9ヵ月頃の赤ちゃんは、まだまだパパママの食事のサポートが必要な時なので、きれいに食べれることよりも、このスプーン&フォークをもって楽しく食事の時間を過ごせるように、安全面や小さな手でも持ち続けられる形・サイズ感などを観察したり、試していただいたママからコメントをいただいたりしながら検証してきました。

三觜さん

安全面でいうと、グリップのS字の形は、喉まで入らないことの補助になっているという点も大きいですね。今回、S字の形にしたことで生まれたメリットのひとつです。
S字形状に関しては、お口への運びやすさを考えたときに生まれたアイデアでした。喉付き防止という観点だけで考えると、大きな傘がついたほうがいいと思うのですが、モニターをしている中で、S字になっていてお口の奥まで入らないから安全だというお声をいただきまして、確かに安全面にも寄与しているという話になったんです。

ーーすごい! S字形状によって、赤ちゃんの食具に必要なさまざまなことが叶えられているんですね。

食卓に置きたくなる、愛らしいデザイン

開発初期段階の製品形状イメージを起こしたデザインラフ

開発初期段階の製品形状イメージを起こしたデザインラフ

ーー機能面もさることながら、デザインも本当にかわいくて、つい手に取りたくなります。

三觜さん

赤ちゃんの持ちやすさを第一優先としつつ、デザインのこだわりとしても極力丸みのある形にして、やさしい印象にするというところは大事にして作りました。スプーンの先端にも丸みを持たせて口あたりをソフトにし、フォークのギザギザ部分も痛くない形に仕上げました。

鈴木さん

モニターが終わるごとに、その場で“これだと赤ちゃんのお口に入らないからこんなふうに変えよう”と、すぐにみんなで話し合いましたね。そうやって機能面の改良からデザインの方向性が決まっていくことも多々ありました。

ーーモニターリサーチの直後にお話しして、そこでチェンジしようという、そのスピード感もすごいですね。

鈴木さん

そうですね。研究と開発とデザインと、みんなで一緒にやっていった感がすごくある製品でした。

岩永さん

カラーに関しては、離乳初期のフィーディングスプーンや、先行して発売しているベビー食器「KIPPOI(キッポイ)」に合わせた世界観になっています。

三觜さん

『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』、食品がのっても嫌な色じゃない、かつ最近トレンドのおしゃれな配色を目指しました。旧品はボウル部が真っ白でスカッとしていましたが、近頃のママやパパが好きな落ち着いた色味に合わせてグレー系にしました。グリップの色も淡めにしてトレンドの配色を取り入れつつ、食器と食品がすべて統一したバランスになるよう意識しながらデザインしました。また、今回はカテゴリー全体のリニューアル戦略として“群で魅せるPKG戦略”としてパッケージデザイングループのチームメンバーがPKGをまとめ上げてくれました。“プロダクト”と“パッケージ”デザインの両面でも一丸となって作り上げた世界観となっております。

ピジョンの離乳食スプーン・フォークシリーズと、ベビー食器「KIPPOI(キッポイ)」

ピジョンの離乳食スプーン・フォークシリーズと、ベビー食器「KIPPOI(キッポイ)」

2023年度グッドデザイン賞受賞!
ご協力いただいたママと赤ちゃんに伝えたい

製品開発の背景も含めて高く評価され、受賞の運びとなった『じぶんでつかえるスプーンフォークシリーズ』

製品開発の背景も含めて高く評価され、受賞の運びとなった『じぶんでつかえるスプーンフォークシリーズ』

ーーそして、2023年度グッドデザイン賞を受賞の運びとなったわけですね。受賞のよろこびをお聞かせください。

三觜さん

各部署で連携して作った製品なので、そこを評価いただけたことが何よりもうれしいですね。また、高齢者の食具の特徴を盛り込んだ広い視野(次回詳細掲載)や大規模な調査・情報収集を含めたリニューアルの部分を評価いただけたことも、本当に光栄なことでした。

鈴木さん

素直にうれしかったですね。入社して最初に携わった製品だったので、思い入れもありました。
受賞が決まったとき、一番にお知らせしたいと思ったのは、今回モニターリサーチに参加してくださったママと赤ちゃんでした。もう、直接電話をしようかと思うくらいでした(笑)。

岩永さん

製品のさまざまな工夫が、審査員の方にも世の中的にも伝わって受賞につながったことが本当にうれしかったですね。今回のリニューアルは、新しい調査や知見を盛り込みつつも、旧品を踏襲する部分も多くありました。その中でいかに変えていくか、新しさを出していくかということが求められる中、工夫の仕方やこだわるポイントの視点を変えることで、より良いものが作れるということを、製品が受け入れられたことで改めて感じることができました。

私たちにとって、「食具」とは?

改めて「食具とは何か」について考えるみなさん

改めて「食具とは何か」について考えるみなさん

ーー最後にみなさんにとって「食具とは何か」ということをお聞かせください。

三觜さん

僕は美術系の大学の出身なのですが、個人的にベビー用のカトラリーや食具は、大学時代からからやりたいと思っていた商材でした。まさかこういう形で製品を作れるとは思っていなかったので、本当にうれしいです。
食具を作りたいという思いの原体験が、“お気に入りのスプーンでアイスを食べること”です。小学生の頃からアイスを食べるときは必ずそのスプーンを使っているのですが、そのスプーンですくえる量の口当たりがすごく好きで。僕にとって、アイスを食べるベストなスプーンだと思っています。今でも実家にあって、実家に帰ったときにはそれでアイス食べています。それくらいお気に入りのスプーンを持っているということもあり、食具への想いが強いのかもしれません。『じぶんでつかえるスプーンフォークシリーズ』が、使うお子さまやママ、パパの記憶に残る食具になってくれたらうれしいですね。

鈴木さん

“食具とは”……。深いですね。でもやっぱり、赤ちゃんにとって食具とは、毎日の食事の時間を通して自分で食べる意欲や楽しさを感じてもらえるようにしていくものだと思います。だからこそ、それぞれの月齢でできる動作一つひとつを考えながらの商品づくりを大切にしてきました。食卓を囲む時間が楽しい時間であってほしいという想いを込めながら、今回、食具の開発に携わらせていただきました。

岩永さん

食具とは、赤ちゃんが一番最初に使う道具だと思っています。はじめての道具=食具で、安全に、自分で食べられるようになってほしいというのが、心からの願いです。その大切なステップの一環に携われたことは、本当にうれしいことですね。

ーー赤ちゃんのお口の成長に寄り添い、使いやすさと安全性にこだわったピジョンのスプーン&フォーク。赤ちゃんの「食べたい」という欲求を満たし、楽しく食べることをサポートする商品に仕上がった背景には、開発のみなさんの素晴らしい発想力と強い熱意があることを感じたインタビューでした。
次回は、『じぶんでパクパクスプーン&フォーク ステンレス 1才6ヵ月頃から』を中心に、まだまだ話しきれない商品の秘密に迫ります。

『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』

『じぶんでつかえるスプーン&フォークプラスチック 9ヵ月頃から』

文/羽田朋美(Neem Tree) 写真/矢部ひとみ

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