日本の国内市場シェアNo.1(※1)のピジョンの哺乳器シリーズ『母乳実感』。その特別バージョンが300本の数量限定で2024年12月2日(月)より発売開始!毎日の授乳時間を特別なひとときにしてくれる『母乳実感ボーンチャイナ』は、陶磁器メーカー・鳴海製陶(NARUMI)が長年培ってきた技術と匠の技を駆使して生み出した逸品です。「ボーンチャイナ素材で哺乳びんを作る」という難しい課題にチャレンジしてまで、ピジョンが届けたかった思いとは。
※1 ピジョン調べ(2023年インテージPOS 全国ベビーショップ・ドラッグストア合算拡大推計値による)
NARUMIのみなさんには、本社のある名古屋からオンラインでご参加いただきました。制作を担当したNARUMIの坂本さん、藤井さん、宮沢さん、ピジョンの開発担当である渡邊さんと森さんを中心に、その開発の舞台裏を伺いました。
目次
「ボーンチャイナ」ってどんな素材?
――まずは「母乳実感ボーンチャイナ」の商品についてコンセプトをお聞かせください。
渡邊さん(ピジョン)
老舗の洋食器メーカーであるNARUMIさんと共同開発し、日本で唯一(※2)、哺乳びんの素材に「ボーンチャイナ」を採用した商品です。ピジョンでは「ご家族にとっての授乳時間を、ほっと安らぐことができ、特別なひとときにできる哺乳器を届けたい」という思いで、常に新しい素材や形状の哺乳びんの開発に挑戦しています。これまでは傷がつきにくい耐熱ガラス製や、軽くて扱いやすいプラスチック製の哺乳びんが主流でしたが、さらに特別な授乳体験を提供するため、新たな素材として陶磁器に注目しました。
※2 国内大手育児用品メーカーが発売した哺乳びんにおいて(2024年10月時点 自社調べ、INTAGE/Nint 21年1月-24年9月参照)
これまで、さまざまな哺乳びんの商品開発を担当してきたという渡邊さん。
森さん(ピジョン)
なかでも「ボーンチャイナ」は上品さと温かみを併せ持ち、授乳時間をもっと特別な時間にしてくれるのでは?という思いから、開発がスタートしたんです。また、プラスチックと比べると、耐熱ガラス製のようにキズが付きにくく衛生的で、熱伝導率が高いため早く冷めるのでスムーズに授乳できるという特長もあります。
普段は病院や産院、クリニック向けの哺乳びんの開発を担当している森さん。
――「ボーンチャイナ」とは、どういう陶磁器なのですか?
坂本さん(NARUMI)
「ボーンチャイナ」は18世紀にイギリスで初めて作られた磁器で、材料にリン酸カルシウムを20%以上含み、白色度が高いのが特長です。高い硬度を持ち、非常に滑らかで美しい光沢が出るので、陶磁器のなかでもひときわ高級感のある仕上がりになります。
世界でも群を抜く美しさであると評価を受ける
NARUMIのボーンチャイナの多彩な魅力
・薄くて繊細でありながら丈夫。一般磁器に比べ高い強度!
・リン酸カルシウムの含有率は世界のトップクラス。温かみのある白さと美しい透光性を実現。
・焼成中に使う「治具」と呼ばれるオリジナルの補助道具による、精度の高い優雅な形状。
・「北欧の貴婦人のよう」と表現される、表面の美しさと絵柄の鮮やかさ。
(写真提供*NARUMI)
藤井さん(NARUMI)
今回の哺乳びんにも必要な技術ですが、繊細さと高級感を追求した製品づくりがNARUMIの強み。たとえば、ホテルなどで使われるお皿は、積み重ねたときに隙間がほとんど生じないように、均一な形状を作ることができます。これは、先人たちが編み出した手法を受け継いできた、長年の技術の蓄積により確立された、独自の製造工程によるものなんです。
NARUMIの技術力と親身なサポートで、共同開発がスタート
――なぜNARUMIさんと共同開発することになったのですか?
渡邊さん(ピジョン)
NARUMIさんは「ボーンチャイナ」の国内トップメーカーであり、技術力とブランド力に信頼を寄せて相談したのがきっかけでした。ピジョンの哺乳びんを持参して初めてNARUMIさんに伺ったとき、最初から親身になってくださり、後日、見積書と一緒になんと試作品まで届いたんです!その迅速な対応と新しいことに前向きな姿勢に大変感動して。
その時に届いた試作品をピジョンでも大切に保管。リニューアルする前の形で、形状が細長く、母乳実感の3代目(現行品)に比べると、ボトル部分が細長い2代目の形状。
――新しいことに挑戦をするときに、それは心強いスタートでしたね!一方、NARUMIさんは、哺乳びんを作るのは初めてだったかと思いますが、最初はどのような印象だったのでしょうか?
坂本さん(NARUMI)
NARUMIの「ボーンチャイナ」は強度があるとはいっても、実際に哺乳びんの基準としてクリアできるか不安はありました。まず研究部隊がさまざまな素材を検証しながら同時にピジョンさんでも強度試験を何度もしていただきました。素材にOKが出たところで、ようやく私のいる制作部隊に話が降りてきたのですが、「難しい…」というのが第一印象でしたね。特にネジ式のキャップ部分は、ただ噛み合えばいいのではなく、しっかりした気密性が必要でした。焼き物は製造過程で縮んだり、歪んだりするのは当たり前ですから、ネジの精度とともに、容量にばらつきが出ないようにしなくてはいけないのも、大変でしたね。
渡邊さん(ピジョン)
難しいことをお願いしているというのは、我々も自覚がありました…。
坂本さん(NARUMI)
弊社は精密に仕上げる技術が得意ではあるのですが、さらに上の精度を求められました。ときに社内でも揉めながら(笑)…試行錯誤していきました。
モニター越しに苦労話をはじめて聞いて驚く渡邊さん。「えぇ…(絶句)NARUMIのみなさんには、根気強く、本当に粘り強く対応いただき、感謝しかありません!」
ひとつひとつ手間ひまかけるNARUMIのモノづくり
――NARUMIさんのモノづくりはどのように感じましたか?
渡邊さん(ピジョン)
初めて三重の工場を訪れたときに、絵付けの転写紙を貼る工程を見せてもらったのですが、本当に手間と時間をかけて作られていると感じましたね。
NARUMI製品の絵付けは、すべて手作業で丁寧に転写シートが貼り付けられる。(写真提供*NARUMI)
NARUMIさんのモノづくりの姿勢に「ひとつひとつとても丁寧に向き合っていて感動しました。」と渡邊さん。
渡邊さん(ピジョン)
通常の哺乳びんは金型で短い期間で大量に作られますが、NARUMIさんと作るボーンチャイナの哺乳びんは成形から絵付けまで、非常に長い時間をかけて人の手で作られるので、最初に掲げた、「普段の授乳時間を、ほっと安らぐ特別な時間にしてほしい」という思いにピッタリだと確信を持ちました。それに、現場の雰囲気がとても良く、みなさんの笑顔がすごく印象に残っています。
森さん(ピジョン)
出張から戻ってきた渡邊さんの報告の第一声が「みなさんの笑顔が素敵でした!」でしたよね(笑)。
「素晴らしい環境でモノづくりをされているから、魅力的な製品が生まれるんですよね」と納得のふたり。
生きている素材だから難しい「ネジ」の噛み合わせ
――ところで、哺乳びんのネジ部分はどんなところが難しいのでしょうか?
藤井さん(NARUMI)
先ほどもお話しした通り、陶磁器に使う粘土は焼成すると約15~20%縮む性質があります。そのため、キャップとびんがぴったり噛み合うネジ部分の成形は粘土の特性から非常に難しく、高い技術力が求められます。また、型から抜く際に変形や削れが生じることがあります。乾燥や焼成の過程での縮みにより、正確なサイズを実現するのは容易ではないんですよね。そこで、設計段階で角度を微調整し、手作業での修正を加えて現在の形にたどり着きました。スポンジを使って丁寧に仕上げ、削れすぎないよう注意しながら、同じ品質を保つためひとつひとつ確認しながら作業を進めました。
型を何度も作り直して調整。「機械仕上げが難しいため手作業で対応します。焼く前はまだ柔らかな状態なので、少しでも力を入れると変形してしまうので、繊細なタッチで作業を進めます」と藤井さん。(写真提供*NARUMI)
森さん(ピジョン)
しっかり閉まらないと隙間からミルクが漏れてしまうなどのおそれがあるため、NARUMIさんは何度も調整を重ねて、この部分の精度を実現してくださいました。
「NARUMIさんの前向きな姿勢が本当に心強くて。私たちのリクエストに対して実直に向き合っていただけました」と森さん。
細やかな調整を繰り返し、キャップとピッタリはまるネジが完成。ネジの始まりと終わり部分の正確な仕上げの美しさ!
坂本さん(NARUMI)
実際、「そこまで精度を求められるのか!」と驚くことも多かったですね(笑)。
「そうですよね~…」と、当時の思い出話でインタビュー中も盛り上がる。
坂本さん(NARUMI)
いえいえ、こちらもピジョンさんが細部まで徹底的に調査し、ひとつひとつ確認する姿勢には感心させられました。それに「応えたい」という思いで臨みました。何度も名古屋に足を運んでくださり、「どんなにコストや時間をかけても、品質には絶対に妥協しない会社です」とおっしゃった言葉が印象に残っています。通常の陶磁器製造ではここまで深く掘り下げることは少ないのですが、赤ちゃんが使用する製品であることから、私たちも安全性への妥協は一切ありませんでした。
使いやすさと精度を極めた内側の目盛り
――ガラスやプラスチック製の哺乳びんの本体は通常透明なので、ミルクの量が分かりやすいですよね。ボーンチャイナ製品でも同じように使えるのですか?
森さん(ピジョン)
はい!工夫をしました。目盛りの表記は内側に入れてあるのですが、どのくらい入っているか分かりやすいように、色や配置にもデザインチームが検討を重ねました。
「通常の哺乳びんは横の数字が50ml刻みの表示が多いですが、そうすると内側の目盛りがミルクで隠れて見えにくくなることを考慮して、ボーンチャイナの哺乳びんでは80mlや120mlといった細かい目盛りも追加しました。」と森さん。
目盛りの数字は左右に配置し、白色に映えて視認性の高い紺色を採用。上から覗いて、入っている量が確認できる仕様。
宮沢さん(NARUMI)
実は、この内側の目盛りも大きな難題でした。絵付けと同様、転写シートを貼り付けて焼き付けるのですが、容量の正確さが求められるため、目分量で位置を決めて貼るわけにはいきません。試行錯誤の末、「焼く前の本体に印をつけたらどうだろう?」提案し、型にわずかな筋を入れることで、形状の内側にガイドとなる線を入れることができました。これにより、ガイドを目印にして、目盛りを正確な位置に貼ることが可能になったのです。
水彩画のような透明感のあるイラストはボーンチャイナならでは
――透明感のあるイラストも印象的ですね。
森さん(ピジョン)
表面の光沢と鮮やかな発色が特長の「ボーンチャイナ」でしかできないデザインにしたいと思いました。白地に映えるような、水彩画風のNARUMIさんが得意とする濃淡のあるイラストを採用しました。
ガラスやプラスチック製の哺乳びんへの印刷は、数や線の太さなどに基準があり、この濃淡や細い線は再現できない。これまでにない多色使いで水彩画のようなデザインはボーンチャイナならでは。
絵付け転写中の作業風景。繊細な色合いのグラデーションまで再現できるNARUMIの技術。(写真提供*NARUMI)
渡邊さん(ピジョン)
「使ってないときでも佇まいが美しい」、そんな哺乳びんを目指したんです。こだわりのひとつに、ロゴを本体側面に入れず、底にいれました。360度どの面でも楽しめます。
イラストのテーマは「shining sky(輝く空)」。「赤ちゃんの未来が色とりどりに輝きますように」という願いが込められている。
手にする喜びや安らぎ感を、授乳中に味わってほしい
――300 個限定とは希少ですね。どのような⽅に、どんな場⾯で使っていただきたいですか?
渡邊さん(ピジョン)
ひとつひとつ手間をかけた職人技なので、本当に希少で、特別感のある哺乳びんなんです。やはり日常の中の授乳時間で、特別感を味わってもらいたいと思っています。
特製ギフトボックスに入った300個限定の『母乳実感ボーンチャイナ 160ml(shining sky)』。※実際のギフトボックス内には取扱説明書とリーフレットが含まれます。
宮沢さん(NARUMI)
長年ギフトアイテムとしても親しまれているNARUMIなので、大切な人のお子さまや家族へのギフトに最適だと思います。実用的な哺乳びんとしての機能はもちろんですが、見た目の美しさを持つ特別な品として喜ばれると思います。
森さん(ピジョン)
箱やリーフレットなどのデザインはパッケージデザイン担当がこだわって作りました。綺麗な水色のベースに金色の縁取りは、NARUMIさんの食器からインスピレーションを得た上品なデザイン。開けた時の喜びを演出するように、緩衝材を入れなくても安定感のある仕様になっているんですよ。
「どうしたら、お客さまが箱を開けた瞬間『わあ!』と感動してくれるかな?…と、この哺乳びんを使って幸せな授乳時間を過ごしていただいている景色を想像しながら、開発をしていました」
藤井さん(NARUMI)
陶磁器は、何百年も前の食器が現在まで残るほど、劣化しにくい素材ですから、丁寧に扱えばいつまでもご愛用いただけます。哺乳びんとして使用する期間は短いかもしれませんが、その後も使ってもらえたら嬉しいですね。
坂本さん(NARUMI)
ピジョンさんの商品で、卒乳しても役目を変えて哺乳びんを使い続けられる、パーツがあるんですよね!
「この母乳実感パーツのことですね!」と嬉しそうに商品を手にする渡邊さん。
渡邊さん(ピジョン)
今回のボーンチャイナ製の哺乳びんは、乳首を外して『母乳実感パーツ ふた』に付け替えると、小物入れとしてお使いいただけるんです。思い出の哺乳びんを、卒乳後も使い続けられるおすすめのアイテムです!
『母乳実感パーツ ふた』 母乳実感パーツの「ふた」の色味ともぴったり。おやつ入れや小物入れなど、一生使える宝物に。
森さん(ピジョン)
いい意味で哺乳びんっぽさがないので、生活感を感じさせないのも魅力のひとつ。授乳中はもちろん、棚に置いてあるときにも、ふと目にはいった際にほっこりしてもらえたら嬉しいです。
今回取材したのはこの人たち
画面両脇にいるのが「母乳実感ボーンチャイナ」の開発を担当したピジョンの森さん(左)と渡邊さん(右)。画面内は鳴海製陶(NARUMI)のみなさん。左から東京支部で新規事業などを企画する畔見さん、部長の十文字さん、形状製作を担当する坂本さん、転写紙・貼り担当の宮沢さん、形状製作を担当する藤井さんと課長の大前さん。
『母乳実感』は耐熱ガラス製やプラスチック製などさまざま。
左から
・『母乳実感 哺乳びん(耐熱ガラス製) 160ml』は、キズがつきにくく衛生的。熱伝導率が高く、早く冷めてスムーズに授乳できる。
・『母乳実感ボーンチャイナ 160ml(shining sky)』は、贈り物にもぴったりな高級感がある。
・『母乳実感 哺乳びん(プラスチック製)Tree 160ml』軽くて割れにくい、医療機器にも採用されている上質なプラスチック(PPSU)製。
・『母乳実感 哺乳びん T-Ester(プラスチック製) Flower garden 160ml』クリアで透明度が高く、それでいてプラスチックならではの「軽さ」をあわせ持つ新しいプラスチック素材。
文・写真 エチカ