哺乳びんは、赤ちゃんが最初に使う大切な道具。ママやパパにとっても、毎日の授乳のなかで自然と目に入り、生活の一部ともいえる存在です。ピジョンの「母乳実感®」は長年にわたり、赤ちゃんの飲みやすさと安心・安全を第一に考え、親子の授乳の時間に寄り添ってきました。その“変わらない価値”を大切にしながら、育児の時間や暮らしにもそっと馴染むデザインを目指して生まれたのが、「母乳実感® Sheer(シアー)」です。【前編】では、開発を担当した打越さん、デザインを担当した伊藤さん・髙岡さんに、「母乳実感® Sheer」シリーズ誕生の背景と込めた思いを伺いました。
暮らしに馴染む哺乳びんを。「母乳実感® Sheer(シアー)」はここから始まった
――新発売の「母乳実感® Sheer」は、シンプルで大人っぽいデザインですね。シリーズを立ち上げた背景を教えてください。
伊藤さんこれまでの「母乳実感®」は、無地のもの以外は絵柄のある“使っていて楽しい”デザインを大切にしてきました。一方で、「シンプルなものがほしい」という声も、少なからず寄せられていました。
企画の発端となったのは、デザイン部内での「あったらいいよね」という会話でした。立ち上げに関わった担当者は現在育休中なのですが、そのメンバーの個人的な育児体験も、大きなヒントになっています。
「1人目の育児では、毎日大変ななかでも、かわいい哺乳びんを見るだけで気持ちが軽くなる瞬間がありました。一方で、2人目を妊娠して家の中に子どものものが増えていくなかで、できるだけすっきり暮らしたいと思うようになりました。さらに、哺乳びんは毎日目に入るものなので、パパにとっても心地よいデザインであることが大切だと感じました」
こうした実体験をきっかけに浮かび上がってきたのが、「インテリアに自然に馴染み、生活の一部になる哺乳びん」という発想だったんです。
そこで、単に装飾を減らすのではなく、ピジョンの哺乳びんが本来持っている「素材の良さ」や「品質の高さ」そのものを、デザインとしてどう表現できるかを考えるようになりました。そうして立ち上がったのが、「母乳実感® Sheer」の企画です。
日々の暮らしのなかで、無理なく使い続けられること。その感覚が、新しいシリーズへとつながっていきました。
――シリーズ名の「Sheer」には、どのような意味が込められているのでしょうか?
伊藤さん「Sheer」という名前には、素材そのものが持つ透明感や美しさ、そして赤ちゃんの純真無垢な存在感を重ねています。いくつもの言葉を検討するなかで、軽やかさや洗練された印象を持ちながら、新しいシリーズで表現したい世界観を、もっとも自然に伝えられる言葉としてたどり着いたのが「Sheer」でした。
また、「Sheer」には、透き通るようにシンプルなデザインを通して、わが子へのまっすぐで純粋な想いに、そっと寄り添いたいという気持ちも込めています。「母乳実感® Sheer」が、赤ちゃんと哺乳びんを使うご家族の時間を、より深める存在になれたらうれしいですね。
授乳の時間を、親子にとって心地よいものに
――「母乳実感®」ブランドとして大切にしてきたことは、「Sheer」シリーズではどのように受け継がれているのでしょうか?
伊藤さんまずお伝えしたいのは、これまでと“変わらない”母乳実感であるということです。赤ちゃんが安心して使えること、親御さんが信頼できること。その土台は、これまでと同じです。
そのうえで「Sheer」では、母乳でも哺乳びんでもこれまでと変わらず、赤ちゃんが心地よく飲めることや、品質面はそのままに、授乳の時間そのものを、より上質に感じられるようなデザインを目指しました。
授乳の時間は限られていますが、親子にとっては本当に大切なひとときです。その時間が、少しでも心地よく、気持ちが整う時間になってほしい。赤ちゃんのことを一番に考えるのはもちろんですが、育児をする人の気持ちや暮らしにも、きちんと目を向けたいと思っています。
まっすぐなこだわりが伝わる統一感のあるシンプルなデザインは、赤ちゃんをずっと見つめてきたピジョンの研究や、素材へのこだわりを体現しているものだと感じています。
変えたのは“つくり方”。変えないのは“安心”
――今回はデザインが新しくなったほかに、乳首の部分のシリコーン素材も変更されたそうですね。
打越さんそうなんです。「Sheer」では 環境に配慮された素材を採用しました。原料の一部や、製造工程で使うエネルギーを見直すことで、環境への負荷を抑えたシリコーンになっています。
といっても、シリコーンそのものの性質が変わったわけではありません。変えたのは、調達や作り方の部分。ですから、耐久性やにおい、口あたりなどの使い心地は従来のものと同じで、安心してお使いいただけます。
――環境に配慮した素材とのことですが具体的には、どのような特徴があるのでしょうか?
打越さん特徴は、大きく分けて次の3つです。
まず、シリコーンの主原料の金属ケイ素(シリコンメタル) を作る過程で必要な還元剤の一部に、木炭※を使用しています。
これにより、石炭・コークスなど化石由来の炭素材の使用を一部代替する取り組みを行っています。
※木炭は製造工程で使われるため、製品に木材成分がそのまま含まれるわけではありません。
次に、製造工程において、太陽光や水力などの再生可能エネルギーを活用している点です。素材をつくる段階でのCO₂排出量を抑える工夫がされています。
そしてもうひとつが、ヘルスケア分野では日本で初めての採用であること。建築分野などでは使われ始めている素材ですが、赤ちゃんの健康に関わる製品への採用は、ピジョンが第1号なんです。
品質や安全性は、これまでのピジョン製品と同様に大切にしながら、使うことで環境への配慮にもつながる素材です。
――新しい素材を採用した理由は何だったのでしょうか?
打越さんコストもかかるため、決して簡単な選択ではありませんでしたが、それでも環境に配慮したグリーン素材を採用したのには、ピジョングループ全体の思いがあります。赤ちゃんたちが将来暮らす地球が、少しでも心地よい場所であってほしい——そんな願いから、環境への取り組みを進めてきました。
なかでも哺乳びんは、多くの方に使っていただいているピジョンを代表する商品です。だからこそ、まずはここから取り組みを広げていく意味があると考えました。
一方で、赤ちゃんが使う道具である以上、安心・安全や使い心地を犠牲にすることはできません。だからこそ、「変えない」という判断にも、強くこだわっています。
暮らしに馴染む佇まいを目指しながらも、母乳実感として大切にしてきた安心や使い心地は変えない。その両立のために、Sheerでは素材の選び方やつくり方から見直してきました。【後編】では、「母乳実感®」の乳首設計のこだわりや、Sheerの佇まいを形づくる細部の工夫、パッケージに込めた思いを、3人の言葉でひも解きます。
今回取材したのはこの人
「母乳実感® Sheer」の開発に携わった、設計担当の打越さん(左)、デザイン担当の伊藤さん(中央)と髙岡さん(右)。
文・写真/エチカ






